はじめに
私は現在アメリカに駐在しているので、日本のことに関しては結構疎くなってきているのですが、自民党総裁選、衆議院選挙等で金融所得課税が話題になっているので、ここに今考えていることを記録しておこうと思います。
実効税率が下がるのは所得金額1億円から
事の発端は、自民党総裁選の前に、岸田さんが金融所得課税を考えているという趣旨の発言をしたことだったかと思いますが、これはすぐにやめた様でした。その後も、何度かそんなコメントが出たり、引っ込んだりしているようですが、どうも積極的な議論にはならなそうな感じです。
ここで言う、金融所得課税ですが、問題としてとらえられているのは、所得税の1億円の壁と言うものの様です。
こちらがそのイメージ図とのことですが、合計所得が1億円を超えると、総所得に占める金融所得の割合が増えるため、結果として実効税率が下がりだすという話です。時事通信社のサイトからお借りしました。
記事には、こんな風に書いてあります。
給与所得課税の税率は、所得税と個人住民税を合わせて最大55%で、所得が多いほど高い累進制となっている。一方、金融所得への課税は一律20%。この結果、年間所得1億円を境に、所得に占める金融所得の割合が高くなるほど所得税の負担率が下がる構造となっている。
時事通信 https://www.jiji.com/jc/article?k=2021100800981&g=eco
財務省によると、19年の所得税負担率は、所得額が5000万円超~1億円の層でピークの27.9%。この先は比率が徐々に低下し、50億円超~100億円では16.1%まで下がる。
これは、つまりサラリーマンなどの人々で金融資産を全く持っていないと、全てを総合課税対象として扱われ、その上限の55%+控除となる一方で、同じ所得を金融所得として得ていた場合、税率は20%+復興なんちゃら税?なので、これを比較すると分離課税される金融所得を多く持っている方が税率が低くなり、問題だ。そして、それが顕著に現れるのが、総所得1億円。
と言う話の様です。
ここで気にすべき点は2点あります。
- 新規課税対象は金融所得
- 金額は合計所得1億円
です。
金融所得の範疇には、株式の譲渡損益や、支払い配当収入などが含まれるのだろうと思います。また、これ自身も、譲渡損益の場合は利益に対して課税されるものであり、そこから買い付けにかかったコストは引くことができるはずです。
と考えると、課税されるパターンは以下の3パターンになるはずです。
- 譲渡益を1億円以上獲得した
- 配当支払いが1億円以上あった
- 1と2の組み合わせで1億円以上の利益があった
これって、一般の人が関係ある世界でしょうか?サラリーマンとしての所得はご存知の通り、500万円ぐらいが平均値のようなので、所得の5%程度なのでここでは無視します。
一般の兼業投資家が、譲渡益で1億円を獲得しようと思うと、運よく10年で2倍(利回り7%ぐらいでしょうか?)になる株を買えたとしても、種銭が1億円必要になります。仮に高配当利回りで、10%の株があったとして、1億円の配当を得ようと思うと、10億円の株式が必要になります。日本株の配当利回りが2%だとすると、50億円です。
と言った具合で、あまり今の私には現実感のある数字には思えません。
世の中の議論を見ていると、これを許すと、1億円以下の金融所得の人もその税率が適用される前提で話が進んでいるように見えますが、その前提は正しいでしょうか?
冒頭に書いた通り、壁は合計所得1億円にあり、その先の実効税率が1億円よりも低いことが問題となっているので、その解消策は少なくとも合計所得1億円の実効税率と同じぐらいに壁の向こうも引き上げるという話になるのではないでしょうか?
ただ、もともと20%だった金融所得税率が10%になり、20%に戻った経緯もあるので、一律30%に・・・と言う話も全くないとは言えないと思いますが、もしそうなったとしたら、それはそれで何と言うか・・・。ですがね。
結局重要なのは一律とは誰も言っていないのではないか?と言うこと
つらつらと思うところを書きましたが、結局のところ、課税対象がどこになるのか?と言う話は、どこにも出ていないのではないか?と言う点です。
これが無いことには、その政策は良いとも悪いとも判断することができず、フーンでおしまいになってしまうのですが、じゃぁ、なぜこんな感じになるのかと言うと、情報を受け取る側が、それをちゃんと精査するだけの能力が無いからってことになるかと思います。
マスコミの報道を受けてとか、インフルエンサーの言っていることを受けてとか、色々な理由はあると思いますが、物事の本質がどこにあるのか?と言うのを常に意識していないと、情報過多のこの世の中をうまくサバイブすることは難しいのでしょう。
まとめ
- 話題の金融所得課税に関して、思っていることをまとめておきました。
- 私個人の意見としては、恐らく一律30%とかにはならないと思うので、まぁ、どちらでも良いかなと言う印象で、ただ、税率を高くするとそれだけ資産フライトは進むだろうなとも思います。