はじめに
ここ数年は、読む本と言えば金融、投資関連の本が多くなってしまいました。今回は、長期投資家のバイブルとも呼ばれているThe Future for Investorsを読んで学んだことを記録しておこうと思います。
この本に関する情報
私が読んだのは、英語で書かれている原著なのですが、この本自体は邦訳版も出版されており、『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』というあまりにも有名な本が日経BPから出版されています。
こちらが原著です。
邦訳版のシックな表紙は原著の$を前面に押し出したものとはかなり違った趣になています。最初は本当にこれが?とちょっと疑いましたが、中を読んでみたらこれだと確信できました。
この本の主張
英語の本、仕事と子育ての間での読書、そもそも専門外の分野ということもあり、読破までにはかなりの期間をかけたと思います。その間、薄れていった記憶もあれば、引き続き脳味噌に刻まれている主張もあるので、後者に関して記しておきます。
主張は以下に集約されると理解しました。
- リターンは期待値との乖離によって決定される
- マクロ的な観点では経済は人口動態と高い相関がある
- ブランドに紐づくプレミアムが利益の源泉
各々、もう少し掘り進めてみましょう。
リターンは期待値との乖離によって決定される
これは、「なるほどな。」と思いました。マーケットは「想定通り」を好むため、何か予想外の出来事が起きると、動揺する傾向にあるということです。例えば、とある企業の業績が良いのか、悪いのか?それ自体はあまり大きな問題ではなく、当初予想(みんなの想像)より良いのか、悪いのか?が重要という話です。この情報を早く知り、他の市場参加者より有利に振る舞いたいため、人々は米国企業の4半期決算の情報を注視し、流れに乗り遅れない様にしなければならない様です。
ただし、長期投資を嗜好する者にとっては、その上下はチャート上の一時期のたわみでしかなく、より注視するべきはEPSやDPSが確実に成長しているか?という観点かと思います。
経済は人口動態と高い相関がある
これは、IMDにいた時にレポートを書いた際に私が考えていた主張と同じであり、この主張自体には驚きはないのですが、本著ではさらに詳細にその関係を深掘って行っており、アメリカのシニアが現役自体に株式を中心に築き上げた資産を、その後誰が引き継いで行き、またその結果何が起きるのか?と言う話でした。
ベビーブーマーが株で築いた資産は、その後加齢と合わせてリスクを落とすために、債権へ移行していかなければなりません。その際に、彼らが持っていた株を買い取るのは誰なのか?そのお金で債権を買うと何が起こるのか?彼の主張によれば、先進国でリタイアを迎えたシニアの持つ株式は、その下の若年世代もしくは、途上国で財を築き始めている一部の投資家が買い取る。一方で、債権に対しては大きな需要が生まれるため、金利は上がらない期間が長く続くだろう。という話でした。
ブランドに紐づくプレミアが利益の源泉
これは、自社の商品を他社よりも少しだけ高く買ってもらえる、その状況が顧客に対する交渉力であり、企業の利益の源泉になるという話でした。
例えば、どこか知らない国へ行き、喉が渇いたと言って、コンビニに入り2種類の水が売っていたとします。1つは自分が知らないローカルブランドの水、もう一つは自分も知っているグローバルブランド(例えばコカコーラ)の水。どちらも同じ水なのですが、コカコーラは500mlあたり10円高かったとします。どちらを買いますか?地元民ではないほとんどの人はコカコーラの水を買うと思います。たとえ、採水地が同じであったとしても、10円高く払ったとしてもコカコーラの水を買うと思います。それがブランドであり、利益の源泉になる。という主張でした。
総括すると
上記の通り、この本ではいくつかの主張をしていますが、最終的には、事業をグローバルで展開しており、長期にわたり、顧客に対して価格交渉力のあるブランドを有している企業が投資対象として理想的な企業になりうる。という話だったかと思います。また、そう言った企業は得てして成熟した企業が多く、流行りの業界とは違う分野でビジネスを展開しているため、あまり目立たず、投資家からの期待も相対的に低く、それゆえ多くの利益を限られた投資家に還元できる、そんな環境にあると言えます。具体的な銘柄に関しては、様々な方々が取り上げられている様に、KO、XOMなどなどです。
まとめ
- 英語で専門書を読むのはやっぱりなかなか辛いことではありますが、それでもやれると信じていると最後にはやり切ることができます
- 投資という活動は元来、スリルとは無縁な農耕的な活動に近いのかもしれないと改めて思いましたが、その農耕的な活動を馬鹿みたいに続けるには恐ろしいほどの認定力が必要になるのですが、それを実践すべくこの先も頑張っていきたいと思います