はじめに
日本で暮らしていると、まさか医療費や保険金の請求金額が誤っていることなど、人生で何度も無いと思いますが、アメリカでは本当にこれが日常茶飯事です。ここの所、そこそこの金額で何件が続いたので、記録しておこうと思います。
保険金請求の仕組みに関して
日本とアメリカでは保険金請求の仕組みが全然違うので、比べるためにも多少なりともその前提条件を知っていないと話が訳が割らないと思うので、まずはそれをざっと雑な感じで説明しようと思います。
In-netとOut-net
まずはこれですね。
日本だと、どの医者にかかっても健康保険が利用できると思いますが、アメリカは違います。自分の加入している健康保険と、医師が扱える健康保険がマッチしていて、初めて健康保険の効用を最大限に利用できます。
つまり、自分が加入している健康保険のIn-netに、かかる予定の医師が加入していれば、自己負担が最も安くなり、自分が加入しているIn-netにその医師が加入していなかった場合はOut-netになるため、In-netに比べると診療費用が高くなります。どれぐらいか?というのは、その保険に依ります。
つまり、表にするとこういう分類になります。
医師 | |||
In-network | Out of network | ||
健康保険 | 加入 | 一番安い | 加入している保険によって金額はまちまち |
未加入 | ありえないほど高い | ありえないほど高い |
ということで、アメリカで医者にかかるときは、自分の保険のIn-networkかどうかをちゃんと確認してからかかるのが吉でしょう。
保険診療と自由診療
一時期日本でも保険診療と自由診療の垣根をなくした混合診療に関する議論があったかと思いますが、今はどうなったのでしょうか?アメリカは基本的に混合診療というか、どの診療行為にどれだけの保険が適用できるかが、健康保険のプランに定められています。そんなことを調べる駐在員も少ないと思いますが、そういった観点からすると、混合診療と言えると思います。
これにより、何が起こるかと言うと、大体医者が保険会社に連絡して確認をしてくれるのですが、診療をする前に、この診療は保険適用、もしくは適用外なのでいくらいくらかかるけど良いか?と聞かれます。
例えば、骨折などした際には、レントゲンを撮ると思いますが、年間での保険適用での撮影対象枚数が決まっていたりします。レントゲンはまだ比較的一般的な話なので、とはいってもカジュアルに取れるようですが、MRIとかはそんなに頻繁に取る物でもないため、2回/年とかかなり限られているようです。
こういったことが、すべての診療行為に対して発生するため、手続きをする方はかなり煩雑です。
請求は医師単位
これが日本の感覚からすると最もわかりづらい物かと思いますが、医療行為にかかる請求は医療施設単位ではなく、医師単位で行われます。
例えば、先日出産をした妻ですが、それに伴う請求は、産婦人科、麻酔科医、施設、新生児ケア等々、あらゆるかかわった人から請求が来ます。請求元がばらばらということは、もちろん、請求のタイミングもバラバラです。
請求におけるアカウントという概念
そして、ここまでくるともはや日本には概念が存在しないので、理解できない気もしますが、アメリカでは病院にも患者のアカウントという概念があります。この場合は、日本語訳の口座というものではなく、どちらかというと残高の方がしっくりくると思います。
まぁ、いろいろなレイヤーの人々が住む多民族国家アメリカですので、おそらく、踏み倒し、もしくは、支払いが滞る人がわりに頻繁にいるのではないかと思います。そのせいか、医療機関としても患者から取りっぱぐれないように、患者の残高がプラスで維持されるように、少し多めに請求しておいたりするところもあるようです。
こういった形で、日本だと患者が意識することなく、医療機関側で確実にこなしてくれていることを、関係する全員が、自分の正義に従って全力でやることになります。そうすると、何が起こるかというと、みんな自分は正しいと思っているので、何か間違っていることがあった場合、その負担は患者がすることになります。
何を間違えるのか?
こんな感じなので、間違えないわけがないじゃないかと思ってしまうのですが、とにかく、間違えるし、過剰に請求されます。その例を以下に挙げておきます。
思った以上に保険金が請求出来た
上の方で書いた通り、診療項目によって、保険が適用されるかどうか、また、その条件等も患者ごとに違うため、医療機関も毎度これを確認します。するとたまに、思っていた以上に医師から保険会社へ保険金請求ができてしまうことがあります。
そうすると、保険会社から見た患者の負担額は、患者が実際に払った金額よりも少なるなるはずなので、EOB(Explanation of Benefit:日本でいうところの診療明細でしょうか)に記載の患者の自己負担金額と、自分が実際に支払った金額がずれて、必要以上に多く払っていることになります。
こうなると、損しているのは自分なので、それを取り戻すべく、医療機関に問い合わせをして、返金の手続きをしてもらう必要があります。
治療が終わったのにアカウントのバランスがゼロになっていない
これはアメリカという国の習慣ではどうなのかはわかりませんが、一連の治療行為が終わったのにもかかわらず、アカウントのバランスが0にならないことはまぁあります。そうすると、上記と同様に、患者がそれまでに支払った金額とEOBに記載の自己負担金額に差分が出ます。この差分をちゃんと返金してくれと言わないことには、自発的に返してくれることは無いでしょう。だって、また次も掛かるかもしれないでしょ?
ということで、こちらもちゃんと返金してと言わないと、返金してくれないので、返金の依頼をしましょう。
保険金請求の申請を間違えてた
最近あったわけわからんシリーズはこれなのですが、ある一定年齢を超えた人には保険適用となる検査も、保険が適用されないケースがあります。それは、医療機関側が申請を間違っていた場合です。
これも、それ自体はこちらからは確認することができないのですが、一連の診療行為が終わった後に、EOBと支払った金額を比較していたところ、なぜか多く払っていたので、なんでだ?と思って確認したところ、保険会社への請求を間違えていて、保険適用されなかったため、その分患者に転嫁したとか、良く判らないことを言い出しました。
本当に、マジで勘弁してほしいと思いましたが、こんな誰かのミスで軽く数百ドルずれてくるので、本当に信用なりません。
まとめ
- アメリカでの診療に伴う費用の請求と、日本でのそれを軽く比較しながら、アメリカでは医療機関と言えども、如何に信頼できないかということをまとめておきました。
- 医療機関ではたらく人は、アメリカ国内でもそれなりに学と見識と倫理を持ち合わせている人の可能性が高いと思うのですが、如何せんその他でかかわりあう人のことを思うと、そのベースがとても低いところにあることは一目瞭然なので、たとえ医療機関と言えども、一ミリたりとも信用できないということは伝わったかと思います。