The Value Killers by Nono Fernandesを読んで

はじめに

私はいわゆる理系というやつで、昔からなんとなく自分は理数系に進むんだろうなという思いと共に、疑いもせずに、大学も大学院も理工系に進みました。ある時に、世の中にはビジネススクールというものがあるということを知り、これに興味を持ち実際に進学し、色々と学んできました。

その中で、強く興味を引かれたのがFinanceのクラスでした。ここでは、当時Financeを担当していたNuno Fernandesが書いたThe Value Killersに関しての読書感想文を書いておきます。

書かれていること

この本では、Nuno Fernandesが研究の一環として取り組んだであろう、過去の失敗したM&Aを整理し、それがなぜ起きたのかを整理しています。この本を読むと、いろいろな理由はあるものの、結局のところは、責任を持ってDDからPMIを実現するProjectが存在しないことが大きな理由であると述べている気がします。

もちろん、その他にも色々なことが書いてあります。例えば、Investment BankerはDealをクローズすることがIncentiveにつながるため、途中で打ち止めるという決断をできないとか、「戦略的」という言葉の裏には何があるのかをしっかり確認しないといけないとか、そう言った話です。

私は、これらのことを全てひっくるめて、M&Aチームが覚悟を持って臨まないために、世の中のM&AのDealはほとんどの場合、合併元の会社の株主の価値を毀損する形で取引が行われると解釈しました。ちょっと日本人的な解釈ですが、概ね間違っていないと思います。

学んだこと

こんな本を趣味で読む人間は、どれだけうちの会社のメンバーを探してみても三人といないと思います。一応M&Aチームみたいな部署はあるのですが、おそらくこう言ったことを積極的に学んでいるタイプではないのかなと思います。

ということは、この本を読んで学んだことを実務に生かせるタイミングが来ればきっと、その他の学んでいない人よりは多少なりともうまくやれると思います。

さて、何を学んだかと言うとこんな感じでしょうか。

  1. M&Aによるシナジーは、P/Lのどこに現れるものなのかをあらかじめ明確にしておく必要がある。

    MBAを修める前の私が英語でこんなこと書かれたらナンジャラホイ?だったと思いますが、今ならわかります。P/LのTop lineたる売り上げから、Bottom lineたる経常利益までの間には、色々なコストや利益が追加されます。このM&Aの効果はどこの数字がどうなることで現れるのか?を明確にしなさいという話ですね。なるほど。

  2. 適切な判断を下せる組織構造が必要

    誰かの一存で、走り出したら止まらない公共事業みたいな形で行われる場合、それは大体シナジーが実現されずに価値を毀損することになるので、適切なタイミングで、適切なメンバーが意見を言える様な組織構造が必要ということです。Devil’s advocateみたいなやつですね。特に、理由が「戦略的」となったらRed flagだそうです。そりゃそうだ。

  3. 覚悟を決めて取り組む

    とても日本人的な発想ですが、私の理解はこういうことになりました。対象企業の選定からM&A実施後の効果の確認までを責任と覚悟を持ってやり遂げられるメンバーがチームにいないと失敗するそうです。特に最悪なのが、フェーズごとで担当者を入れ替える方法です。事前のスクリーニング、ディール、PMIこの三フェーズで別々のチームを組成したらまぁ、ダメでしょう。一番割りを食うのはPMIのチームでしょうね。

そのほかにも色々とあるのですが、まぁ、こんなところにしておきます。

おすすめか?

この本はおすすめでしょうか?

一般人には全然勧めません。おそらく1ページ読みきれずに寝ます。

じゃぁ、誰に対しておすすめの本なのか?おそらく、以下のすべての条件に当てはまる人かと思います。

  1. 近々、自分の所属する組織で、現場主導でM&Aなどの大きな動きを起こしてみたいと思っている
  2. 自分の所属する組織のビジネスに関する深い知見を有し、市場の動向も含めた大きな流れを認識している
  3. M&Aの取引だけというよりは、その前後のフェーズも含めて全体を通じて成果を出し、自社の株主価値を上げたいと思っている

こんな感じの人たちでしょうか。

いますかね?いませんかね?日本の現場にいる一般的サラリーマンでこんな意識の高い人がいたらちょっと驚きますが、でも多分こんな感じで且つ英語で本を読むことに苦がない人がいたらきっととても役に立つ本になると思います。

実物はこちら。アフィリエイトに登録しているわけではないので、クリックしても買っていただいても私には1円も入ってきません・・・。ちなみに、全体で80ページぐらいなのですが、海外でMBAを修めると、たとえに純ドメの私でもこれぐらいの本であれば、あまり苦労なく読めるぐらいには英語に慣れることができます。

The Value Killers by Nuno Fernandes

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