金融教育は高校数学のアプリケーションの話なので、ほとんどの人には響かないであろうという話

はじめに

ファイナンシャルリテラシーを上げるために、金融教育を義務教育に組み込んだ方がいいという話をチラホラと聞きますが、ちょっと無理があるかなぁと思うので、ここにメモをしておきます。

世の中で言われる金融教育とは単利、複利、利鞘の話

世の中にある主張をさらっと眺めると、金融教育とは、単利と複利と利鞘の話ぐらいのものの様です。小難しい話は一切ありません。これぐらいの話は、私が高校生だった頃は、数学A/Bぐらいの範囲で出てきたと記憶しています。

私は1年余分に時間をかけて学んだので、どちらの範囲かは忘れましたが、等差数列、等比数列、漸化式などと呼ばれるものがそれに当たります。

Y_n+1 = Y_n+Cが等差数列の話であり、Y_n+1 = A*Y_nが等比数列の話です。ただし、n>=0の有限の自然数であり、A、Cは定数、_nはYの添字とします。

この数式を変形して、Y_n+1とY_0の関係を表したものが、以下の数式です。

等差数列:Y_n+1 = Y_0 + n*C、等比数列:Y_n+1 = Y_0 * A^n

高校生の時には気にもしなかったこの数式ですが、お金のことを考える際にはとても重要です。

つまり、等差数列の方はY_n+1とY_nの差分は永遠にCなのに対して、等比数列の方はY_nのA倍となり、これが単利と複利の差になって将来はとてつもない差になるという話ですね。

単利と複利の差が圧倒的なことは、色々なところで語られているので、これ以上何か話すことはないと思いますが、異なる条件で、どちらがどのタイミングで有利になるのかわからない場合は、グラフを描いてみれば一目瞭然なので、お勧めです。

次に、利鞘の話ですが、これは、どちらも等比数列で増加していく二つの数字があった場合に発生するその差分の話です。

例えば、借り入れの金利が1%のケースにおいて、投資による実質利回り(表面利回りから各種コストを引いたもの)が3%だった場合、その利回りと利子の差分である、2%分が投資家の利益として蓄積されるという、そういう話です。

実際にやろうとすると、もっと色々な条件が発生して、色々とややこしくなるのですが、話を単純化すると、できるかどうかは別として、とても簡単な話だと思います。

金融教育を義務教育に組み込むのは無理だろう

さて、この簡単な金融教育の基礎たる、単利、複利、利鞘の話ですが、義務教育、つまり小学校1年生から中学校3年生までの間の教育課程に詰め込むことができるのか?という話ですが、私の感覚だとまず無理だと思います。

答えは簡単で、私の記憶によれば、周囲のほとんどの人は中学卒業レベルの数学を十分に理解できていたとは言えず、その状況において、高校の数学を追加したところで、誰も理解できないだろうなと思うからです。

また、違ったアプローチで、数学ではなく、生活とか家庭科、社会科などのアプローチで話をしたところで、話題としては興味深いかもしれませんが、おそらく小中学生には響かない話だと思うので、きっと誰も真面目に取り組まないだろうなと思います。たとえ、取り組めたとしても、裏にある数学的な部分の習得が追いついていない状況では、教える方も相当しんどいだろうなと思います。

ということで、この辺の話を義務教育に入れるという意見は、流石に無茶苦茶というか、どうやって?の部分を全く考慮しておらず、机上の空論にもなれていない、単なるイチャモンと言っても差し支えがないレベルの話だと私は思います。

ちなみに、世の中的にはゴリゴリの理系たる私が、こういったことに興味を持って、自分で学ぶことができたその根底には、高校までに学んだ数学的な理解が備わっていたためだと確信しています。

ここでは深くは触れませんが、私は教養というものは、そういうものだと考えています。つまり、自分が学んだことをそこだけに留めずに、他の分野へ応用していく能力とか心構えというものです。

そう考えると、金融教育を義務教育にと言っている人は、高校数学をちゃんとやらなかったか、やったけれどもそれを実生活に応用するだけの教養が備わっていない人なんだろうなというのが私の評価です。

まとめ

  • 金融教育を義務教育の課程に組み込むのは無理だろうという話を書きました。
  • ただ、金融教育の基礎は実はすでに授かっているものであり、それをどう活かすのかは個人の問題であり、それがその人の教養の深さなんだろうという話を書きました

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